卒園前の新入学へのプレッシャー

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いよいよ、あと2カ月足らずで新年度を迎えますね。

新しい教室、新しい担任の先生、新しい友達、新しい教科書、少しお兄さんお姉さんになった気持ち、どれをとっても子ども達が一番ドキドキ、わくわくする時期じゃないでしょうか。

また、お子さん以上に張り切っているお母様もいらっしゃるのではないでしょうか?

そういう方はちよっと注意が必要かもしれません。

毎年この時期に、美術教室の保護者の皆様や教師から耳にするのが、「子どもが幼稚園(または美術教室)に行きたがらない。」「イライラして、絵を汚す子が増えた。」「制作に集中しない。」「表現が幼くなった。」「今まで、しっかりー人で出来ていた子がべたべた甘えてきて、何もしなくなった。」などです。

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下にまだ手のかかる弟妹がいるための「退行現象」でなければ、それはこの時期特有の現象だと思います。

両親(特に母親)の新年度を迎えるに当たっての期待や焦りによる過干渉が原因の場合が少なくありません。

「まだ、幼稚園(小学生)なんだから、大丈夫よ。」と、これまではやさしい言葉をかけていたお母さんが、この時期になると急に「まだ、そんなことも出来ないの!そんなんじゃあ、小学校ヘは行けないよ。』などと言葉がけが厳しくなる時期です。

幼稚園や小学校の先生からも同じようなプレッシャーをかけられます。

まだ見ぬ未来への不安と重圧で「幼稚園に行きたくないよぉ」「早くお家に帰りたいよぉ」など甘えん坊になるのも当然だと思います。

お兄ちゃんやお姉ちゃんがいる弟妹なら、「そんなんじゃ小学校に行けないよ。」「頑張らないとダメなのよ。」と親が叱責しても、上の子を見ているので、「あんなぐらい僕にもできるよ。」などと高をくくっています。真剣に耳を傾けません(事実、下の子は上の子より要領が良い場合が多い)。

弟妹にとっては、お兄ちゃんお姉ちゃんが羨ましくて、早く学校に行きたいのです。

しかし、長男長女の受け取り方は違います。
長男や長女などの第一子は両親にとっても何をするのも初めての経験なので、「うちの子こんなんで大丈夫かしら。」「みんなについていけるかしら。」と心配でついつい過干渉になり、転ばぬ先の口出しをしてしまいます。
机やカバンを選ぶときでさえ、たくさん口出しをしてとても慎重になってしまいます。
慎重に選んでおきながら、「やっぱりあっちの方が良かったね。」などと、一々後悔したりさせたりするものです。
このようにして第一子は慎重になり決断が遅くなります。

その点、下の子は違います。両親も上の子で既に経験済みなので、「何とかなるものよ。」「お兄ちゃんの物を使っときなさい。」てなもんです。

下の子達が「僕あっちの方が良かったのに!」なんて申し出ても、「どっちもおんなじ!変わらないわよ。」といい加減に対応します。
そのいい加減な対応こそが、下の子を物怖じせずになんとかやり抜く力を育てます。

「この子のことが心配なのよね。」と親が不安に思うと、子どもは常に不安で自信がなく、親の力を借りないとできない大人になります。

「この子は大丈夫。なんとかやっていける。」と思うと、その子は自信を持ち自己肯定感が育まれます。そして親が思った通り「大丈夫。なんとかやっていける大人」になります。

どうせなら、「あなたは大丈夫よ!」と信じてあげて「どんな状況でもなんとかやっていける大人」になってもらいたいものです。

そのためには、新年度を迎える今のように環境が変化するときの対応の仕方はとても重要です。

ストレスに対してまともに向き合いすぎると逃げ場を失います。

まともに向き合いすぎるときは柔軟な思考が働いていません。「こうあるべき」「こうしなければならない」という思い込みの呪縛により、いろいろな視点に立って物事を考えられなくなっているときです。

それは、その人らしさとして固定されてしまいます。

将来大人になった時に同じような場面に出くわした時にも同じ向き合い方をしてしまいます。

就職した時、昇進した時、新しい仕事を任された時・・・いろいろな新しい出来事が起こるたびに、過去に刷り込まれた原体験が蘇り、思考と行動パターンを支配します。

少し肩の力を抜いて、「なんとかなるもんだ」といういい加減さを持たないとしなやかな思考モードが働かないものです。

新入学やご進級されるお子様をお持ちの保護者の皆さまも、どうか肩の力を抜いて・・

「なんとかなるものよ」と声に出して言って見てください。

きっとなんとかなるものです。


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PROFILE

屋嘉部 正人
屋嘉部 正人芸術による教育の会GM
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師

大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。

美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。

50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。