☆「固着と退行」ー赤ちゃん返りについてー

前回、芸術による教育の会の研究ノートから「柔軟な思考力について」と言うテーマを3回にわたり取り上げました。

私たちが目指している「芸術による教育」は、なんとかして人生を生き抜く力=「柔軟な思考力」の育成を美術を通して育むことを目的としています。

「柔軟な思考力」を育むためには、その知能を支える「情緒の安定」が重要です。

心が安定してこそ、その基礎の上に優れた知能が育まれます。

イライラしていたり不安を抱えていては、知能は健やかに成長してくれません。

今日は、子どもたちの健やかな成長のためにもっとも大切にしたい「こころ」について取り上げます。

研究ノート

固着と退行

芸術による教育の会研究部長:佐藤かよこ
芸術による教育の会副理事長:寺尾憲

退行とは成人した大人、又は成長の途中の、ある時点において、それまでに発達した状態や機能、あるいは体制がそれ以前のより低次元の状態や機能・体制へ逆戻りすることを言います。

子供を育てる上で一番身近でお母さん方に関係の深いものは時間的退行です。これはいわゆる 『赤ちゃんがえり』といわれるもので、未熱で幼児的な世界へ後戻りすることを言います。自分が生活している場で何らかの拒否(欲望や願望の阻止)に出会うと、過去の固着点に引かれて退行が生じます。精神分析者のフロイトの説によれば、固着点というのは幼児期の本能発達の途上で、特定のリピドー(性愛のエネルギ一)や自我機能がとり残されているところということです。

自我の発達について言えは、幼児期の心的葛藤が未処理のまま解決されないまま抑圧されている場所なのです。この場所を固着点と呼びます。この固着点が、成人してからのいろいろな神経症の原因になっていると言われています。

各種の心理テストは、この固着点の時期や状態を知るために作られたものなのです。

幼児においての退行現象は、育児の経験のあるお母さま方には思い当たることが多くあると思います。

一番わかりやすいのは、第一子(長男、長女)が成長して幼稚園に入り、やれやれとひと安心しているところに第二子が誕生します。元気で幼稚園に行き、排便・排尿のしつけ、手洗い、衣服の脱着もきちんと出来ていた子供が、ある日からそれらができなくなって、『赤ちゃんがえり』をしてしまいます。

こんなはずではなかったと、お母さま方は『このまま甘えさせてはいけない。見過ごしたらだめになる』と考えて、やっきになって子供を叱咤激励しています。幼稚園の先生もどうしたんだろうと気をもみだします。子供は、意欲がなく、おもらしをしたり、泣いてばかりといったことが目立ってきます。

これは、赤ちゃんの出現によって、今まで何の障害もなしに得られていた母のやさしい愛が得られなくなった結果『夢よもう一度』という願望にしがみついているからなのです。だから赤ちゃんのようになれば、お母さんがやさしくかまってくれるという、居心地のよかった段階への後戻りが始まるのです。

このところを察してあげて、赤ちゃんが生まれても『あなたはとても大切なのよ、とても愛しているのよ。』というお母さんの愛を確認する機会を生活のなかでたくさんつくる努力をすれば、すぐにお母さんの期待どうりに回復します。

これまでの園生活で問題行動をもつ子供の8割は、このパターンに属します。赤ちゃんばかり可愛がって、自分はかまわれないで、放り出されてしまうのではないかという不安感が固着点となり、退行現象を起こし、お母さんや先生をヤキモキさせる訳です。

子供の退行現象と固着点の因果関係は、ほとんどがここにあると言っても過言ではありません。この固着点を早い時期に気がついて回復してあげないと、それがそのまま子供の内部に抑圧され、固着点として残り、大人になってまでいろいろな神経症の原因になってしまうと言われています。

いかがでしたでしょうか?

自分自身の幼少期を思い出したり、お子様を通して実体験したことを思い出した方もいらっしゃるのではないでしょうか。

子どもに限らず、大人だって「赤ちゃん返り」しますよね!

はい!私はしますよ!

私は今は禁酒3ヶ月目ではありますが・・

それまでは毎晩お酒を飲んでいました。

お酒を入れるおちょこは、母の乳首の感触を無意識に味わい、ちびちび飲むことで「赤ちゃん返り」して心を癒しているのだそうです。

それについて私は頷けますが・・みなさんはいかがですか?

お母さんと離れている不安を埋め合わせるために、バッグの紐やハンドタオルの角などをしゃぶる幼児と同じだと思います。

そんな子どもに、「おっぱい吸っているみたいだね!」なんて言ったら大変です。

すごい形相で睨まれますよ!

同じように、ちびちびお酒を飲んでいるご主人に、「おっぱい吸っているみたいでかわいい!」なんて絶対に言わないでくださいね。

無意識で感じていることが顕在化したら、それは大変ですよ!

そう言う自分に気づかないように・・無意識で赤ちゃん返りしているんですからね。

そう言った心理学に興味のある方は「口愛期」または「口唇期」で検索してみてください。

子どもたちは、お母さんから離れる不安を感じながら幼稚園や小学校で頑張っています。

是非、おうちではいっぱい気前よく赤ちゃん返りさせましょう!

安心してください! ずっと、赤ちゃんのままで楽しいわけはありません。

子どもは本来育ちたがりなんです。

十分な愛情に満たされて赤ちゃんごっこに飽きたら、お母さんの手を離して一人で歩き出します。

もちろん、大人だって社会人として外面を作って外の世界で頑張っています。

だから、家に帰るとグダグダなんですよ。

そう!大人が家の中で最愛なるパートナーにだけ見せる「甘え」は、特別な信頼のある人にだけ見せる秘密の内面です。

外で頑張っているからこそ、家(内)の中で退行しているのですから。

そうそう! 家の中でだけ見せる態度は絶対に外に漏らしてはいけない秘密ですよ!

大人同士は当然、我が子のことでも家の中だけで見せる甘えを外に漏らしてはいけません!

親愛なる人から秘密を破られ育った人は、秘密を守れない人になったり、人前で露出しても恥ずかしくない恥知らずの人になっちゃいますよ!

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心が不安定になりやすい年度替りのこの時期は、「フィンガーペインティング」などで肌の感触を通して「赤ちゃん返り」を気持ちよくできる課題を取り入れます。美術は心を癒す魔法なんです!

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PROFILE

屋嘉部 正人
屋嘉部 正人芸術による教育の会GM
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師

大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。

美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。

50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。