前回は、子どもたちの健やかな成長のためにもっとも大切にしたい「こころ」について「固着と退行」・赤ちゃん返りをテーマに取り上げました。
今日も、芸術による教育の会の研究ノートを参考にし、「非中心化による子供の問題行動」について私の意見も書きます。
研究ノート
非中心化による子供の問題行動
芸術による教育の会研究部長:佐藤かよこ
芸術による教育の会副理事長:寺尾憲
非中心化とは、弟妹の誕生によって今まで家族の視線や関心が自分から弟妹に移ってしまうことを言います。出産によって母は一時的に病院に入り、子供は母から離れて暮らすことになります。そして母が家に帰ってきてもしばらくの間赤ちゃんと一緒に寝ていたり、お祝いにくる人の注目や話題は赤ちゃんに集中して、自分だけが何か取り残された存在になってしまいます。
ある日突然こんな状況がなぜ出現したのだろう。別の子供が今までの自分と入れ替わっていることに対する子供の戸惑いと不安は大変なものでなのです。ビアジェ(著名な児童心理学者)はそれを『非中心化』という言葉で示しました。子供は生まれてから暫くの間すべての中心は自分にあるというような生活をしているが、赤ちゃんが生まれると中心はそちらに移り、自分が中心から外れると言う体験をすることになるのです。
問題行動に見られる非中心化
幼稚園で先生や友達が話しかけても返事をしないとか、集団行動しないとか、母の目にふれないところで母の気がもめるようなことをしたり、あんな良い子がどうして、というようなことが見られます。又、逆に乱暴したり、言う事を聞かなかったり、おもらしをしたり、チック症状が現れたり、以前はできていたことが急にできなくなったり(退行現象、赤ちゃんがえり)します。お母さん方は、子供のこのような状態に、戸惑い、悩み、あげくの果ては子供に文句を言ったり怒ったりします。又幼稚園の先生もその扱い方に苦慮しています。
どう対処すべきか
子供のこの非中心化による戸惑いや葛藤は大変なもので、父母の対処が不適当、不充分な場合がほとんどなのです。
赤ちゃんの誕生とはどんなものか、自分は何か、ということを良く理解しないうちに、急に『あなたはおにいちゃんでしょ !』と母から突き放されて自立を要求されてしまうのです。したがって、子供はお母さんに怒られないように自分の欲求を我慢して良い子になろうとするのです。この我慢して押し込めたものが幼稚園や他の場所で問題行動となって出てくるのです。
この非中心化が長男長女の性格を決定してしまう大きな要因なのです。例えば女の子は我慢した分を下の弟めがけて放出し、弟を支配して溜飲を下げます。弟は姉の機嫌を取って女っぽくなり、お母さんの気をもませます。これはほんの一例ですが、赤ちゃんが生まれたからといって、急に突き放すのではなく、赤ちゃんが生まれたために、甘えを我慢して頑張っている子供の心を優しくいたわったり、なぐさめたりすることが最も大切なことなのです。このことが家族の中に置ける自分を相対化する力を身につけさせる早道でもあります。この方法を誤ると、外や幼稚園でいろいろと気のもめる行動が多くなるだけでなく、カインコンプレックスやダイアナコンプレックスや、ピーターパン症候群の原因となっていくものなのです。
美術教室では、子供たちの素直な心を気持ちよく絵に出しやすい雰囲気を作っています。
その雰囲気をつくりさえできたら、先生としての9割の役目は出来たと言っても過言ではありません。
子供たちは、気持ちを素直に気持ちよく表現することで心が穏やかになるようです。
絵を描く前と描き終わった後では子供の表情が明らかに違うのです。
とても幸せな穏やかな顔のなります。
「非中心化」の渦中にいる子どもは、イライラや不満を画面を「汚す」という行為で気持ちを表出させます。
「汚す」と母が飛んでくると言うことを無意識で分かっているのです。
イイ子を演じていても、褒めてもらえるのは最初だけです。
次からは、イイ子でいるのが当たり前にされてしまうのです。
赤ちゃんは、何も出来なくても泣いているだけでも、愛され構ってもらえるのです。
「非中心化」の渦中にいる子どもは、イイ子ではダメなんだと悟ります。
咳き込んでみたり、お腹や足が痛いと泣いてみたり、すねて黙り込んでみたり、爪を噛んでみたり、弟妹を叩いてみたり、幼稚園に行きたくないと親を心配させたり困らせることが、「僕もここにいるよ!」というアピールになるのです。
暴走族の心理と同じです。
暴走族はただ走りたいだけではないのです。
迷惑をかける(汚す)ことで自分の存在を確かめているのです。
社会の中での自分に「非中心化」を感じ、バイクを通して泣き叫んでいるのです。
無関心という暴力に、怒りを込めて立ち向かっているのです。
非中心化により、子どもたちや若者が問題行動を起こす気持ちがわかりますよね。
ぜひ、お兄ちゃんお姉ちゃんにはいっぱいえこひいきしてほしいと思います。
半分半分じゃあダメなんです。
赤ちゃんが生まれる前は、100%得ていた愛情が50%になってしまう兄姉と、生まれながらにして50%が当たり前の弟妹とでは、全く感じ方が違います。
50:50では、兄姉は納得できません。
せめて、兄姉80%:弟妹20%くらいが公平なんじゃないでしょうか。
理屈でアドバイスするのは簡単です。
でも・・私には、その子どもたちの親を責める気持ちにもなれません。
その子どもたちの親だって心に余裕がない時があります。
私もそうでした。
いつも穏やかな日ばかりじゃありません。
そして、何といっても親業初心者なんですから。
誰かと比較すると至らないところや不器用なところがあるのでしょうが、失敗し後悔しながらも親だって一生懸命頑張っています。
美術教室を通して私たちがすべきことは、親を責めることではありません。
子育てに悩むお母さんの役に立つことです。
美術教室の先生は、生徒とは週に一度教室で会うだけです。
お母さんは、毎日我が子と向き合っています。
週に一度のレッスンで子供たちのイライラや不満を一時的にとってあげるよりも、お母さんのイライラや不満を和らげるお手伝いをした方が、子どもにとっては何百倍も幸せなはずです。
だから、私たちはお母さんが安心し幸せな気持ちで子育てできるように、美術的な視点でアドバイスをさせていただきお手伝いするのです。
そうすることで、あ母さんの心が穏やかになり、子供と幸せな時間を送ってもらいたいと願っています。
今この深刻な悩み事が来年は笑いながら思い出話として語れるように!
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PROFILE
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沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師
大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。
美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。
50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。
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