子どもの想像力を育みたいけど・「好きに描いていいよ!」「あなたの好きなように描きなさい!」が苦手な子どもについて考える

子ども:「ママ、何描けばいいの?」

お母さん:「何を描いてもいいのよ」

生徒:「先生! 何描けばいいの?」

先生:「今日は自由に描いていいんだよ」「好きなものを好き勝手に描きましょう!」

そうは言っても、好きなように描けない・・何を描けばいいの? 自由ってなあに?

「これを描きなさい」ってテーマを決められると描きやすいんだけど・・

「好きなように描きなさい」って言われると何を描いていいのかアイデアが出ない。

「うちの子どもは自由に弱い?」「発想が苦手?」みたいに悩んでいるお母様の声をよく耳にします。

なぜ? 好きなように描けないのでしょうか?

2〜3歳の頃は好き勝手に描けたのに・・

成長とともに自由に絵が描けなくなる。

なぜ、2〜3歳の頃は好き勝手に描けたのでしょうか?

それは、「描く」という行為自体が楽しいのであって、「何をどのように描くか」という結果を求められていないから楽しいのです。

言葉の発達とともに、「何を描いたの?」「これは何?」と描いたものに意味が生じます。

そして、その意味がわかる表現ができると、「上手に描けたねえ!」と評価がついてきます。

この「評価」こそがクセモノなんです。

子どもは「何か意味のあるものを描かないと評価されない」と思い始めるのです。

「ただ、描いているだけで楽しかったのに・・意味のあるものを描かないと大人は評価してくれない。」

幼い頃は、

1、まず描いてみる(手を動かしてみる)!

2、描きながら、次どうするかを考える!=描きながら考える

3、結果よりも描いている時のライブ感が楽しい!

年齢が進み、言語表現のスキルが身につくと

1、「何を描くか?」まずイメージを言語化する。

2、まず考えて、イメージをある程度明確にしてから描き始める!=考えてから描く

3、プロセスよりも結果を問われる。言葉での意味づけが求められ、お勉強みたいで楽しくない。

「意味など気にせず、描きたくて描く」から「意味を求められて描く」ようになってきます。

「遊び」ではなく「課題」のようになってくるのです。

「自由に描いていいのよ!」と言われても・・「自由に描きなさい」という「課題」なわけです。

そんな雰囲気の中、真っ白な画用紙が目の前にあります。

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このような改まった状況で、「さあ!自由に描いてくださいね!」と言われたら、皆さんはどんな感じがしますか?

この雰囲気・・どう見てもカジュアルな感じというよりも、何かを試されるような・・

かしこまったフォーマルな雰囲気を感じませんか?

子どもも同じように感じているのです。

大人:「あなたの好きなように描いていいのよ!」
(さあ!さあ!描きなさい!好きに描けと言われて何を描いてくれるのかしら?楽しみだわ!期待しているわよ!)

子ども:「・・・」
(好きに描いていいと言いながら、よくわからないものを描くとケチをつけるのよね! 前に犬を描いた時に、熊みたいって言われ・・耳の形が違うとか色がどうだとか・・結局自由に描けないじゃないの!)」

子ども:「何を描いていいかわからないよ!」
(だから・・何を描けばいいかそっちで決めてよ。そっちの要望を先に聞かないと、その期待に応えられないじゃないの!)

大人:「何でもいいのよ!あなたが描きたいと思うものを描いてくれればいいのよ!」
(この子は主体性がないのかしら・・発想力が乏しいのかしら・・いつもかしこまっちゃって自由に描けないのよね。)

そもそも、子どもにとって「描く」というものは「汚し」の延長にあるものです。

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こうやって絵の具で思いっきり遊び、それを十分の楽しみ、大人にあたたかく認められた子どもは、「自由に描きなさい」と言われても、臆せずに描くことができます。

2years old boy's drawing

まだ言葉が話せない2歳過ぎたばかりの子供が、握りしめたクレヨンを紙になすりつけます。

自分が手を加えたところに、何らかの確かな痕跡が残る。

その痕跡を見て、目を丸くしながらお母さんに共感を求めます。

そこには、描かれた痕跡に意味づけなどありません。

「ほら!お母さん!すごいよ!見て!」と、子どもの内なる心の声が聞こえるようです。

子どもは「自らの力で何かに影響を及ぼした」という「自己効力感」を味わっているのです。

何を描いたかの評価など求めていません。

ハイハイをする・つかまり立ちをする・一人で立つ・歩き出す・・

その延長上に「描く」もあります。

ですから、子どもにとっての描くという行為は、本来はとても自然なことなんです。

「描くの好き?それとも嫌い?」ではないのです。

子どもの絵に評価をしなければ、子どもはみんな描くことが好きなんです。

さあ・・皆さん!

今日から子どもの絵を評価するのをやめましょう!

褒めるのではなく、子どもが描くパフォーマンスを一緒に楽しむのです。

そして、アナウンサーになったつもりで実況中継して見てください。

子どもは描くことが楽しくてたまらなくなりますよ!

かずくん

この動画を撮影した時、かずくんは3歳でした。

いま、そのかずくんは中学一年生になり、こんな芸術的な絵を描いています。

相変わらず、描くのが楽しくてたまらないようです。

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PROFILE

屋嘉部 正人
屋嘉部 正人芸術による教育の会GM
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師

大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。

美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。

50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。