前回は、レッスン前での子供達一人一人とのあいさつの大切さについて書きました。
今日は、学校でも行われている「みんな揃ってごあいさつ」について、思うことを書きます。
美術教室の教師と生徒との関係は主従関係ではありません。
学びの場において、お互いに相手を求め、そして求められている関係です。
生徒がいないと先生という仕事は成り立ちません。
先生がいないと生徒として学べません。
お互いが相手を必要としている関係です。
それなのに、私たち教師は生徒に対して、ついつい上から目線になってしまいがちです。
「あいさつはけじめとしてしっかりさせよう!」などと思っているのかもしれません。
始まりの挨拶で、しっかりと場をコントロールしたいと思っているのかもしれません。
その裏の意味は、子どもたちが自分に従ってくれるのか不安なのだと思います。
軍隊ならわかります。
軍曹に従わないと指令通りに動かずに命を落としかねませんからね。
「交流分析」によると、人には五つの心があるそうです。
「批判的な親心」、「養護的な親心」、「大人の心」、「自由な子どもの心」、「従順な子どもの心」の5つです。
交流分析の考案者であるエリック・バーンは、5つの心の使い方(バランス)の違いがその人の性格として現れると言います。
人は環境に依存しますので、環境によって5つの心のさじ加減は変わって来ます。
軍隊という場において「自由な子どもの心」が強く出てしまうと統率が取れずに不都合なことになってしまいます。
だから、家では家族に養護的で優しい軍曹であっても、軍においては「批判的な親心」を演じる必要があるわけです。
そして、オフの時間では自由に振る舞う隊員でも、軍の中では「従順な子どもの心」で規律に従います。
美術教室は、軍隊とは違います。
私たち教師も教師という仮面をかぶって、美術教室という場にふさわしい5つの心のバランスを整えます。
多くは、「養護的な親心」で子供達にアプローチすることで、子供達の「自由な子ども心」を引き出します。
子ども達の「自由な子どもの心」に呼応するように、私たち教師も「自由な子どもの心」のアクセルを踏み込みます。
美術教室の場は、子ども達を従順にさせる場ではなく、生き生きと「自由な子どもの心」を解放する場です。
ですから、美術教室での教師のあいさつも、生徒を教師に従わせるための儀式ではありません。
教師自らが、生徒たちにあいさつをしたいのです。
あいさつをしたくてたまらないのです。
「養護的な親心」を前に出して、まずは子供達に語りかけます。
「今日もよく来てくれたね!」
「疲れていませんか?無理しないで行こうね!」
「教室が終わった後も、宿題が残っていたりと忙しいんでしょ!」
「そんな中で、美術教室を楽しみにして来てくれて本当にありがとう!」
「みんなに感謝の気持ちを込めて、先生からあいさつをしたいと思います」
「こんにちは!よろしくお願いします!」
すると、子ども達はみんなしっかりとご挨拶に応えてくれます。
「こんにちは!よろしくお願いします!」
子ども達に「今日も来てくれてありがとう」と感謝しリスペクトすることで、子ども達もその気持ちに応えてくれているのだと思います。
貴重な時間を共に有意義に過ごしたい。
「こんにちは」は、「今日(こんにち)はご機嫌はいかがですか?」が略されているそうです。
これを英語にすると、「How are you today?」ですね。
相手にあいさつを強要する呼びかけではなく、相手への気遣いの言葉がけです。
そして、レッスン終了のあいさつも同じです。
子どもたちに感謝の姿勢を教えるための儀式ではありません。
私たち教師こそが、このありがたい機会と子どもたちに感謝の気持ちを伝えたいのです。
「みなさん、今日も貴重な時間を美術教室に使ってくれてありがとうございました。」
「来週も楽しみに待っています。」
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PROFILE
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沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師
大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。
美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。
50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。
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