前回の「きみはもう学校に行かないでイイよ!」を書いていて思い出したことがあります。
それは、私が美術教室の先生という仕事を通してとても大きな出来事でした。
もう、20年ほど前の出来事です。
小学4年生の女の子Kちゃんが小学校に行かなくなりました。
ある日、私はKちゃんのお母様から相談を受けて初めてそのことを知りました。
Kちゃんは毎週明るく美術教室に通っていたので、学校に行っていないなんてまったく知りませんでした。
お母様からKちゃんが学校に行きたくないと言っている理由の詳細を聞きました。
いじめなどによるKちゃんの安全を脅かすものではなく少し安心しました。
1時間ほど話を聴いた後で、お母様が私に聞きました。
「先生、どうしたら学校に行くようになるでしょうか?」
当時の私はカウンセリングのテクニックに大変乏しく、全くの主観で正直な思いを伝えました。
「学校なんて行かないでイイですよ!」(きっぱり!)
「Kちゃんはとても社交的だし、教室でもみんなから愛されています。この子なら学校に行かないでも立派な大人としてやっていけますよ!」
能力が高くなんでも一人でこなせるタイプよりも、人との関係を大切に頼り頼られながら事を進めていける人の方が生きる能力が高いと思っていますので、Kちゃんのような優しくて思いやりのあるコミュニケーションができる人なら大丈夫だと思い、確信を持って「この子なら大丈夫!」と言いました。
そして、何となくですが・・
Kちゃんが学校に行きたくない理由は別にあるのではないかと推理していました。
Kちゃんは、三人姉弟の真ん中です。
私は、これまでも真ん中の子がしばしば抱える問題を経験していました。
その多くが自分の価値を確認するための「時間的退行」・いわゆる「赤ちゃん返り」によるものでした。
Kちゃんは、弟が小学生になり母親の手がかからなくなったことを察して、「あのときに帰れる」と赤ちゃん返りをして、母親の愛情を確認しようとしているのではないかと推理したのです。
Kちゃんは、学校の大切な行事ごとだけは、「参加しなきゃ」と思い、無理して登校していたそうです。
というか、お母様が登校させたそうです。
私からお伝えしたアドバイスを簡単にまとめると以下の通りです。
1、学校は休ませる。
2、休んでいる間は、休むことに罪悪感を感じさせるような言葉がけ(例:休んでいるんだから勉強しなさい、テレビは見ない、外に出かけないなどの罰のような禁止)をしない。
3、弟が生まれる前に戻ったつもりで、お母さんとの時間を大切に過ごす。例えば、一緒に楽しいところにお出かけしたり、二人だけでお風呂に入ったり、一緒の布団で寝たりなど。
4、「そろそろ学校に行ってくれないかなあ」と思わない。気前よく休んでいる時間を楽しむ。
5、学校から、友達を使って「楽しいからおいで!」など誘いのプレッシャーをかけさせない。
Kちゃんのお母様は私の推理と提案にご理解ご納得くださり、本気で実践し始めました。
翌々日には、学校の教頭先生から私にお叱りの電話がありました。
「学校に行かないでイイとはどういうことですか!」と、かなりご立腹の様子でした。
電話口でしたが、Kちゃんのお母様にお話しした内容を丁寧にお伝えしましたところ
教頭先生もご理解くださいました。
週明けには、Kちゃんの担任の先生が具体的なアドバイスを求めて美術教室に来ました。
学校の先生方もしっかり対応してくださいました。
私からは以下の2点だけを伝えました。
1、「しなければいけないこと」に誘わないでほしい。
2、お友達などを使って、「学校においでよ!」などと誘わないでほしい。
二週間後にお母様から電話をもらいました。
Kちゃんが学校に行ってみたいと言い出したとのことでした。
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PROFILE
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沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師
大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。
美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。
50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。
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