毎週とっても美術を楽しみにして来てくれていたA君。ある日お母様と一緒に元気のない表情で教室に入ってきました。
「こんにちは!今日も来てくれてありがとう!今日もすっごいの作ろうね!」私は浮かない表情を気にしつつ、いつもの調子でご挨拶をしてみるも、元気のない返事。
A君のことがとても気になり、お母様と「こんにちは。今日も遠いところ本当にありがとうございます、、、。ちょっと元気がないようですが、学校とかで何かありましたか?」と恐る恐る聞いてみました。すると、お母様からは、
「実は来月で美術教室を退会します。手続きをお願いします」と衝撃の言葉が。
「え!、え!、え!、いつも全身で美術教室を満喫しているのに、どうしたんですか!?」「何か先週ありましたか?」と驚きのあまり慌ててしまいました。
「実は、成績が良くなくて、この前のテストで点数が悪かったら美術教室をやめさせると言う約束をしたんです。約束を守ることは大切ですので、やめることにしました。」
美術教室はA君にとって、すべての気持ちを出し切って楽しみしている時間であることは、5年間通ってくれていますので良く知っています。ご家族としては、美術が好きなのはいいけど、何とか勉強をさせたい。では、大好きなものとの引き換えなら、頑張ってくれるのではないかと考えたのでしょう。
A君にとっては、大切なものとの引き換えに頑張らなくてはならなくなり、「恐怖と不安」でいっぱいだったと思います。
このように何かを引き換えにエネルギーを使わなくなることを、「ブラックエンジン」と言います。
ブラックエンジンも社会の中では必要なことですし、時には爆発的なエネルギーを必要とする事もあると思います。でも、ブラックエンジンでは、とても疲れてしまい、燃費も悪く「ガス欠」してしまいます。
美術は、「頑張って描いた絵をママにみせよう」「この前のお礼にこの作品をプレゼントしよう。」「今度の展覧会でみんなをびっくりさせよう」など、感謝する気持ちや、貢献したい気持ち。また褒めてもらいたい気持ちが動機となっていると思います。相手を満たしてあげたい。そして自分も満たされたい気持ちがエネルギーになる、「ホワイトエンジン」で動いていると思います。
成績が上がらないのは、美術教室が原因なら、納得もできますが、むしろA君にとって美術教室は、元気を補充する燃料だったと思います。
そんな思いを胸にお母様と何度も話をしました。
「美術教室を辞めたら成績が上がる訳ではないですし、成績が上がらない原因を一緒に考えていきましょう。」と。。
お母様は「約束を守ることは大切だと思っていましたが、、、美術教室の先生がそこまでおっしゃるなら今回だけは特別に。」と。退会は撤回になりました。
最近は、成績の事を少し聞いたりもしていますが、それからは「突然やめる」と言うことはありませんでした。
美術は子ども達にとって、気持ちを綺麗にし、もう一度新しいエネルギーを満タンにする場だと思います。残念ながら時々ある条件のための引き合いに出されてしまうことがあり、とても悲しくなることもあります。
私たちの伝える力不足なところもあると思いますが、ブラックエンジンの燃料に美術教室を入れるのは、どうかご遠慮いただきますようお願いします。
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