さて、芸術による教育の会ではいよいよ各地域において展覧会が始まります。
展覧会は、生徒と保護者さまにとっては「ハレ」の舞台にあたります。私たち教師は、生徒と保護者さまにとっての展覧会であるという基本的な姿勢で臨みます。
他の先生たちから自分自身が教師としてどのように見られるかという心配ではなく、
生徒一人一人の気持ちに寄り添っていくようにします。
一人一人の生徒が何か1つその子なりの達成感を持ち、誇らしい気持ちになってくれることを期待し指導致します。
中には、展覧会がストレスで美術教室を辞めてしまう生徒もいます。
「何を描いていいかわからない」と悩む生徒もいます。
なぜ、展覧会作品になると何を描いていいかわからなくなるのでしょう?
それは、その「ハレ」の舞台において期待に応えようとするからです。
いつもより良いものを描こうと思ったり、
認められたいと強く思ったり、
認められないのではと心配になったり、
そして展覧会は特別であり、
それにふさわしい作品でないといけないというイメージを持ってしまうことが原因だと思います。
日常の教室のような「ありのままの自分らしい作品」では展覧会にはダメだと思っているのでしょう!
私たちは、子どもたちそれぞれのその気持ちに寄り添います。
「展覧会なんてどうでもいいではなく、展覧会だから頑張ろうと思っている証拠だよ」と。
そして、プロの画家は「何を描こうか?」というテーマを探すために何日も何ヶ月もかかるということ。
なかなか思うように描けずに一度描き進めた作品を塗りつぶしてしまうこと。
イメージ通りに描けずに作品発表を何年もしなかったりすること。
本気だからこそ、簡単に描けないということを子どもたちに伝えましょう。
それと合わせて、今は写真のようにいわゆる写実的に描けるだけが素晴らしい絵画ではないということをプロの作品の実例を見せて紹介しましょう。
私がよく見せる作品は、
マーク・ロスコ
サイ・トゥオンブリー
バスキア
ポロック
猪熊弦一郎
あたりを見せます。
特にサイ・トゥオンブリーは、殴り書きで画面を汚してしまう生徒のお母様に見せます。
生徒作品:1歳から3歳までこのようなぐるぐるを幼児はたくさん描きます
(サイ・トゥオンブリーの作品)
「サイ・トゥオンブリーみたいですね!こないだ、サザビーズのオークションで86億円で落札されたサイトゥオンブリの黒板シリーズをお見せしましょうか?」と言ってiPadで紹介します。
「この子の才能を潰さないように励ましていきますね!」と付け加えます。
保護者さまも我が子の才能を潰さないようにネガティヴな言葉を使わないように心がけてくださいます。
「先生は何でもかんでも褒めているだけ」と思っている保護者さまにもいるかもしれません。
そんな方にこそ、社会で評価されているプロの作品を紹介し「ちゃんと裏付けがあって褒めているんだ」ということでご理解とご納得いただけます。
いい加減に適当に褒めるんじゃなく、プロとしてプライドと裏付けを持って本気で褒める。
だから、生徒も保護者も先生を信頼してくださいます。
「その子の作品に何が足りていないか?」など見てはいけません。
決して生徒の作品の粗探しをしてはいけません。
「その子は、今日何をやったか?」に注目し、その行為に共感し認め励ますのです。
たとえ、せっかくの作品を塗りつぶしてさえ、そうしたくなる気持ちに寄り添い共感し認めましょう。
その子が「完成した!」と言ったら「おお!ついに完成したね!」と言って認めてあげるのです。
そして、いいところを素直に感想として伝えるのです。
決して、「よくできたね!」と言った後から、「もっとこうすれば良くなるんじゃない?」などとは言わないのです。
心の底から「よくできた」と認めた作品に、そんな失礼なことを言ってはいけないのです。
子どもは、たくさん認めてもらい満足すると、もっと良くなろうと思います。
そして、「ああ!そうだもうちょっと描こう!」って自ら描き始めようとします。
その時でさえ、(しめしめ)と思わないことです。
だって、もう完成したはずだからです。
「こんなに素晴らしいのに、まだどこを描こうと思っているの?」と聞くのです。
そして、「勇気あるねえ!」「チャレンジャーだねえ!」と言って、作品ではなくその子自身の行動を褒めてあげましょう!
作品が良くなること以上に、そのチャレンジする姿勢がどれほど素晴らしいかをみんなの前で褒めてあげましょう!
心の底から本気で褒めたときは、たとえ子どもが私たち教師のイメージとは違う方向に作品を進めていこうとも、たとえ見栄えが悪くなってさえも、その勇気ある行動を心より認め励ますことができるはずです。
展覧会制作を通して、より一層生徒達や保護者さまとの信頼関係が深まりますように、
そして何か一つその子なりの達成感を持ち、誇らしい気持ちになってくれることをこころより期待し指導して行きます。
保護者の皆さまのご理解とご協力にこころより感謝申し上げます。
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PROFILE
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沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師
大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。
美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。
50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。
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