絵を描くことに自信を持っている、あるいは 絵を描くことに全く躊躇がない。自信を持ってそう言える人は なかなかいないかもしれません。
美術の先生と呼ばれる仕事をしている私も、人前で絵を描いて見せるような場面では「ほら、よく見ていなさい! 」などと言いつつも 内心はけっこうビビって描いていたりします。
でも、絵が「苦手」だとは全く思ってはいません。
これまでもずっと絵が苦手だと感じたことはないと思います。
私の絵の最初の記憶は、4才くらいのことです。
母親が美容室に行くので一緒に連れていかれました。美容室での長い待ち時間を退屈してしまうので、ノートとクレヨンを母親が買ってくれたのです。昔の田舎なので、パーマ屋さんと文具店とが一緒になったお店だったようです。
4才の私は、いろんな色のクレヨンを使ってノートに わけもわからずにグルグル、ゴシゴシと塗りたくっていたのだろうと思います。
(子どもの絵の発達で言えば擦画期や錯画期という絵を描くことの一番最初の段階です)
そんな塗りたくりを見てまわりの大人たちが、「すごいじょうずねえ!」と褒めてくれたことはハッキリと覚えています。
グルグルの塗りたくりを見て、上手もヘッタクレもないでしょうに。
まあ、おそらく まわりの大人たちは そうやって褒めてやれば退屈がまぎれて、外へ飛び出して行ったりしないだろうと考えたのでしょう。
「なんの絵を描いたの?」と聞かれて、苦しまぎれに「ロケット」と答えたことも記憶にあります。もちろんロケットを描こうと思って描いていたわけではありません。
この時の経験は 私の絵に対する気持ちを決定するほどの大きなものになりました。絵を描くとみんなが喜ぶということを知ったのです。
みんなに上手だと褒められてうれしくなったのです。上手な絵がどんなものかも知らないのに。
この時に、もし一人で絵を描いていただけだったら。
この時に、もし私が描いた絵に大人たちが反応してくれていなかったら。
私は絵を描くということを好きになっていなかったかもしれません。
この時から今に至るまで、絵を描くことを苦手だと感じたことはありません。
それから、絵をこんな風に描きなさい、とか こんな風に描いてはいけませんとか言われた記憶もありません。
(自分が人の話を聞いていないだけかもしれませんが、、)
この時の経験から、
最初の「どうしたら絵を得意にさせることが出来る?」という問いの答えが見えてくるような気がします。
絵が上手に描けていなくても、グルグル塗りたくりでも、絵が
好きになるのです。絵を描いた時にそばに誰かがいて喜んでくれれば。
その経験がありさえすれば、後は一人で絵を描いていても楽しめるのです。ちゃんと喜んでくれる人がいるのを知っているから。
子どもの絵を見てあげましょう!
子どもの絵を褒めましょう!
子どもの絵にビックリしましょう!
子どもが絵を描くことを喜びましょう!
下段登
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