私たちの美術教室に通う男の子の多くは、エディプスコンプレックスの時期になると木刀を作りたがります。
(エディプスコンプレックス:ウィキペディア参照)
木刀は男らしさの象徴であり、子ども達は無意識に力の象徴としての木刀を作りたくなるようです。
私は、あえて・・「小学低学年には木刀はまだ早いなあ・・」と言って、子ども達のエディプスコンプレックスをくすぐります。
4年生になるまで待たせるのです。
素直に待てる子どもはほとんどいません。
なんとかしてお兄ちゃん達(ちょっと上の先輩)が作っている木刀を作りたいのです。
本来、私たちの美術教室は子どもの自由な意思を尊重し好き勝手に作らせますが・・ナイフやカッターナイフ、電動工具を使う場合などは、大けがにつながるような特殊な道具を使う時には簡単には許可を出しません。
特に、エディプス期の男の子に対しては、あえて我慢をさせたりします。
私自身が父親的な役割を演じるのです。
「君にはまだ無理だ!」「そんなに落ち着きがないようでは怪我をする!」などと言って、あえて去勢するのです。
子ども達は「なにくそ!」と反発心を抱いたり、なんとかして自分にもできるところを認めてもらいたいと思います。
今年の展覧会制作で、小学低学年のY君がナイフやカッターナイフを使わずに木工工作として短剣を作り始めました。
木刀はまだダメと言われているので「短剣」にしたわけです。
Y君が作った作品「けんとかま」がこちらです。
Y君は、短剣は自分の手で作っていますが、「かま」は作ったのではなく・・拾ったというか・・見つけたと言えばイイのでしょうか?
先輩が木刀を作るために切り出した後の木片(先輩にとっては必要のないもの)を「かま」として見立てました。
(上の写真の明るくなっている空間が先輩が木刀に使うために切り取った部分です)
Y君は、言うなれば無価値なものから新たな価値を見出したわけです。
思考のしなやかさと心の柔らかさがなければ、なかなかこのような気づきはありません。
そして、私が最もY君の素晴らしさを感じるところは、この作品の台座との格闘にあります。
「短剣」も「かま」も色がつけられていません。
しかし、その「短剣」と「かま」を支える台座は色が塗られ装飾されています。
「短剣」と「かま」は木の素材感のままで、それらを支える台座は色で装飾したいというY君のこだわりに強い意思を感じます。
その台座を何度も卓上糸鋸でくり抜いています。
なぜ、そんなことをしたのか?
それは、台座が「短剣」や「かま」をしっかり支えて、それらを自立させるためです。
大きすぎたり、小さすぎたり、形が合わなかったりと・・何度もチャレンジしながら、最後は「短剣」も「かま」も見事に自立させています。
私は当初、厚みが4ミリしかないこの板が台座では「短剣」も「かま」も支えることができないと思いました。
展覧会で展示するのだから、展示している間に倒れてしまわないようにもっと厚みのある板を使うか木工用ボンドで接着したほうがいいと思いました。
しかし、Y君はこの板にこだわり、「短剣」も「かま」も取り外して使うことができるように、どうしても接着するのは嫌だったようです。
だから、Y君は接着せずにはめ込むだけで自立するように何度も卓上糸鋸でくり抜きながら、成功するまでチャレンジしたわけです。
「何が何でもなんとかする」このあきらめない「心の強さ」と、
上手にくり抜けなかった形をデザインのひとつとして受け入れた「心の柔らかさ」が、
Y君が大人になった時にも使える本物の生きる力になるに違いありません。
追記:ちなみにY君は以前私に「君は天才だからもう学校に行かないでいいよ!」と言われた生徒の一人です。展覧会ではお母様から「もう僕学校に行かないでいいんだよね(記事はこちら)。屋嘉部先生にそう言われたけど」と言われて困りましたと苦笑いされました。「本当に行かないでもやっていけると思いますよ」とお伝えしました。
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PROFILE
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沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師
大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。
美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。
50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。
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