「上手だね」と褒めることで絵が嫌いになると、この1つ前の記事で書きました。
子ども達は、「上手な絵」があるのだから「下手な絵」があることに気づきます。
同じように、「いいね!」があるということは「わるいね!」とか「よくないね!」があると言えそうです。
だから「上手だね!」がダメなら「いいね!」もだめでしょ!という人がいます。
私はそうは思いません。
「上手だね!」と「いいね!」は全く違うものだと思います。
「上手」「下手」というのは、まさに「上」と「下」という優れているものと劣っているものという縦の評価です。
「いいね!」というのは、とても曖昧な言葉がけで、あらゆる方向性を持っています。
「上手でいいね。」
「楽しそうでいいね。」
「不思議でいいね」
「工夫していいね」
「集中していていいね」
「シンプルでいいね」
「(まだ何も描いていないけど)真剣に考えているところがいいね」
美術にはいろんないいねがあります。
美術で使う「いいね!」は評価ではありません。共感です。
ある人にとっては欠点でも見る角度を変えるとその子どもの長所でもあります。
雑に描く → 思いっきりよくっていいね!
汚い色 → 深みのある色(渋い色、不思議な色、独特の色)でいいね!
自信がなく小さく描く → 繊細で可愛らしくていいね!
描くのが遅い → 落ち着いて丁寧でいいね!
ごちゃごちゃしている → 「実験したぞ!」って感じがいいね!
テーマから外れている → 「好き勝手に描きました」って感じが気持ちよくていいね!
クレヨンを散らかしている子どもにさえ、「片付けるのを忘れるくらい集中していていいね。」と言ってあげられるのです。
ありのままを認めてもらえた子どもは自信がつきます。
美術による教育は、自己肯定感を育むために最も適した教育です。
どれだけ認めてあげても、子ども達は成長とともに他人と比較し始めます。
そして、自分がみんなと違うことに不安を感じ始めます。
だから、教師は他人と違うところにこそ、たくさん肯定的な「いいね」を言ってあげる必要があるのです。
ありのままを「いいね」と言ってもらえた子ども達は、「上手か下手か」を気にするなく「好き勝手に描く」ことがますます楽しくなるのです。
自分で感じ、自分で考えて、他人とは違う自分だけの工夫をすることが楽しくなるのです。
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PROFILE
-
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師
大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。
美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。
50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。
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